「仕事中に集中が続かない」「マルチタスクでかえって疲れてしまう」。
そう感じている方は、ディープワークという考え方を知ることで働き方が変わるかもしれません。
この記事では、
- ディープワークとは何か
- ディープワークが仕事を速くする理由
- 今日から実践できる方法
- 向いている仕事・向いていない仕事
を解説します。
【結論】ディープワークとは
一言でいうと、ディープワークとは「通知や割り込みを排除し、認知的に負荷の高い仕事へ深く集中する働き方」です。
浅い作業を並行してこなすより、限られた時間で質の高い成果を出しやすいとされています。
集中力の分散を防ぎ、マルチタスクによる負荷や判断疲れを減らせる点が特徴です。次の章から、その仕組みと実践法を順に見ていきましょう。
定義
ディープワークという概念は、米ジョージタウン大学のコンピュータサイエンス准教授であるカル・ニューポート氏が提唱しました。*1
メール返信や事務作業のように誰でもできる「浅い仕事」と対比し、専門性と集中力を要する作業に深く取り組む状態を指す言葉として使われています。
浅い仕事との違い
浅い仕事とは、メール処理や単純な事務作業など、認知的な負荷が低く、片手間でもこなせる作業のことです。
一方でディープワークは、企画立案や執筆、プログラミングのように、集中を維持しなければ質が落ちる作業に向いています。
両者の違いは、作業の難易度だけでなく、必要な集中の深さにあります。浅い仕事は中断されても大きな支障が出にくい一方、ディープワークは一度集中が途切れると立て直しに時間がかかります。
なぜ現代で注目されるのか
近年は、SlackやMicrosoft Teamsなどのチャットツール、メール、スマートフォンの通知などによって、仕事が細切れに中断される機会が増えています。
そのたびに作業を切り替える必要があり、集中力を維持しにくい環境になりました。
心理学の研究では、人があるタスクから別のタスクへ注意を移すと、前の作業への意識が一部残り続ける「注意残余(Attention Residue)」が起こることが報告されています。*3
こうした切り替えによる認知的な負荷への関心が高まる中で、あえて1つの作業だけに集中するディープワークという働き方が注目されています。
ディープワークで誤解されやすいこと
ディープワークは、「長時間働くこと」や「休憩を取らずに集中し続けること」を意味するものではありません。
重要なのは、一定時間だけでも通知や割り込みを減らし、1つの仕事へ意識を向けられる環境をつくることです。
また、1日中ディープワークだけを続ける必要もありません。メール対応や会議などの浅い仕事と、企画や資料作成など深い集中が必要な仕事を時間で分けることが、現実的な取り入れ方といえます。
ディープワークが仕事を速くする理由
ディープワークが仕事を速くするのは、切り替えに伴う認知的なコストを減らせるためです。
理由を4つの観点から見ていきましょう。
集中力が分散しない
ディープワークでは、1つの作業に意識を向け続けるため、集中力が複数の対象に分散しません。作業の切り替え回数を減らすほど、注意を立て直す手間そのものが発生しにくくなります。
マルチタスクを減らせる
複数の作業を並行して進めるマルチタスクは、切り替えのたびに時間的・認知的な負荷が生じるとされています。*2
ディープワークはこの切り替え自体を減らす働き方であるため、結果としてマルチタスクによる非効率を避けやすくなります。
マルチタスクの仕組みと効率への影響については「マルチタスクを効率よくこなす方法」でも詳しく解説しています。
判断疲れを減らせる
作業を切り替えるたびに、「次に何をするか」という小さな判断が発生します。
判断の回数が積み重なると、意思決定の質が落ちていく状態、いわゆる判断疲れにつながりやすくなります。
あらかじめ1つの作業に集中する時間を決めておくディープワークは、この判断の回数自体を減らす効果が期待できます。
判断疲れの仕組みについては「判断疲れとは」で詳しく紹介しています。
質の高いアウトプットになる
前の作業への注意が完全に切り替わらないまま次の作業へ移ると、新しい作業への集中の質が下がることが報告されています。*3
ディープワークによって作業の切り替えを減らすことで、注意の残留が起こりにくくなり、結果としてアウトプットの質を高めやすくなります。
ディープワークを実践する方法
ディープワークは難しいテクニックではなく、環境を整えることから始められます。
まずは次の5つを意識してみましょう。
| 方法 | ポイント |
| 通知を切る | 割り込みを防ぐ |
| 時間をブロックする | 30〜90分確保 |
| 1タスクに絞る | 切り替えを減らす |
| 作業場所を固定する | 集中モードに入りやすい |
| SNSを閉じる | 注意散漫を防ぐ |
- 通知を切る
メールやチャットの通知は、意図しない作業の中断を引き起こす主な原因です。ディープワークの時間中は通知をオフにしておきましょう。
- 時間をブロックする
カレンダー上であらかじめ「集中する時間」を確保しておくと、会議や割り込み業務に侵食されにくくなります。30分〜90分程度のブロックから始めるのがおすすめです。
- 1タスクだけ行う
ブロックした時間内では、1つの作業だけに取り組みます。複数の案件を同時に進めようとすると、切り替えのコストが発生し、集中が続きにくくなります。
- 作業場所を固定する
場所を変えずに同じ環境で作業すると、その場に入るだけで集中モードへ切り替えやすくなります。逆に頻繁に場所を変えると、環境への適応にも意識が使われてしまいます。
- SNSを閉じる
SNSは短時間でも意識を強く引きつけるため、集中を大きく妨げます。作業中はアプリを閉じる、あるいは通知が届かない状態にしておくことが望ましいといえます。
今日から始めるディープワークチェックリスト
まずは次の項目を確認してみましょう。
- 今日取り組む作業を1つだけ決めた
- メールやチャットの通知をオフにした
- スマートフォンを手の届かない場所へ置いた
- 30〜90分の集中時間を予定に確保した
- SNSや不要なブラウザタブを閉じた
すべてできなくても構いません。まずは1つずつ実践し、集中できる時間を少しずつ増やしていきましょう。
集中が途切れてしまったときの立て直し方は、「集中力をリセットする方法」で具体的に紹介しています。
ディープワークが向いている仕事
ディープワークは、成果の質が集中力に左右されやすい仕事に向いています。
- 企画立案(アイデアを練る、構成を考える)
- 資料作成(データを整理し、論理を組み立てる)
- ライティング(文章を構成し、推敲する)
- プログラミング(設計やコーディングに集中する)
- 学習(新しい知識を理解し、定着させる)
これらはいずれも、途中で作業が中断されると、続きから再開するまでに考えを立て直す時間が必要になる作業です。
ディープワークが難しい仕事
他者との即時対応が求められる仕事は、ディープワークの時間を確保しにくい傾向があります。
- 営業(顧客からの連絡に即応する必要がある)
- 接客(目の前の相手への対応が優先される)
- 管理職(部下やチームからの相談に応じる場面が多い)
- カスタマーサポート(問い合わせへの即時対応が求められる)
こうした職種でも、1日の中に短時間でもディープワークの時間帯を設ける、あるいは対応時間帯とまとめ作業の時間帯を分けるといった工夫は可能です。
すきま時間に情報を抱え込みすぎていると感じる方は、「仕事で頭が回らない原因は脳の渋滞」もあわせてご覧ください。
ディープワークのデメリット
ディープワークには多くのメリットがありますが、すべての仕事や環境に適しているわけではありません。
主なデメリットは次のとおりです。
- すぐに返信や対応が求められる仕事では実践しにくい
- 最初はまとまった集中時間を確保することが難しい
- 周囲の理解や協力が必要になる場合がある
例えば、営業や接客、カスタマーサポートなど、即時対応が求められる仕事では、長時間のディープワークを取り入れるのは現実的ではありません。
そのため、1日の中で30分だけ集中時間を確保するなど、自分の仕事内容に合わせて無理なく取り入れることが大切です。
ディープワークと浅い仕事の比較
| 項目 | ディープワーク | 浅い仕事 |
| 作業内容 | 企画・執筆・設計など認知負荷の高い作業 | メール対応・事務処理など負荷の低い作業 |
| 必要な集中 | 深く持続的な集中 | 断続的な対応でも成立する |
| 中断の影響 | 大きい(立て直しに時間がかかる) | 小さい(再開しやすい) |
| 向いている時間帯 | まとまった時間を確保できるとき | すきま時間 |
| アウトプットの質 | 集中度に比例して高くなりやすい | 作業量に比例しやすい |
よくある質問
Q. ディープワークとは簡単に言うと何ですか?
A. 通知や雑務を排除し、1つの作業に深く集中する働き方のことです。認知的な負荷が高い作業で特に効果を発揮しやすいとされています。
Q. ディープワークに科学的な根拠はありますか?
A. 直接「ディープワークの効果」を測定した大規模研究は限定的ですが、その土台となる「作業の切り替えが生産性を下げる」という現象については、心理学分野で複数の研究が報告されています。*1 *2 *3
Q. 何分くらい集中すればディープワークになりますか?
A. 明確な基準はありませんが、30分〜90分程度のまとまった時間を確保する方法が広く紹介されています。まずは短い時間から試し、徐々に延ばしていく進め方が現実的です。
Q. マルチタスクとディープワークはどう違いますか?
A. マルチタスクは複数の作業を並行して切り替えながら進める働き方です。対してディープワークは、1つの作業に絞って深く集中する働き方であり、切り替えの回数を抑える点が異なります。
Q. 忙しくて集中する時間が取れません。どうすればいいですか?
A. 1日のうち短時間でも構わないので、通知を切って1つの作業だけに取り組む時間をあらかじめ予定に組み込む方法が有効です。長時間の確保が難しい職種でも、部分的な導入は可能です。
Q. ディープワーク中に集中が切れたらどうすればいいですか?
A. 無理に続けようとせず、一度短い休憩を挟んで意識を切り替える方法が有効です。具体的な切り替え方は「集中力をリセットする方法」で紹介しています。
まとめ
ディープワークとは、通知や雑務を排除し、1つの作業に深く集中する働き方です。
切り替えの回数を減らすことで、マルチタスクによる負荷や判断疲れを抑え、質の高いアウトプットにつながりやすくなります。
まずは1日30分、通知を切って1つの作業だけに取り組む時間をつくることから始めてみてください。
ディープワークで仕事中の集中力を高めることに加え、仕事以外の時間に脳を休ませることも重要です。思考をリセットする習慣については、「一人時間の作り方」もあわせてご覧ください。
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参考文献
(*1) Newport, C. (2016). Deep Work: Rules for Focused Success in a Distracted World. Grand Central Publishing.

(*2) Rubinstein, J. S., Meyer, D. E., & Evans, J. E. (2001). Executive Control of Cognitive Processes in Task Switching. Journal of Experimental Psychology: Human Perception and Performance, 27(4), 763–797.
(*3) Leroy, S. (2009). Why is it so hard to do my work? The challenge of attention residue when switching between work tasks. Organizational Behavior and Human Decision Processes, 109(2), 168–181.


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